秩父神社

秩父市

 秩父神社は、崇神天皇の御代に、知知夫(ちちぶ)国の国造の知知夫彦命が、祖先の八意思金(やこころおもひかね)神をまつったのに始まるといふ。武士による妙見信仰との習合ののち、近世は養蚕の神として信仰を集めた。

 ○秋蚕(あきご)しまうて麦蒔き終へて、秩父夜祭待つばかり    秩父音頭

 十二月三日は秩父神社の例祭で、「秩父夜祭」ともいはれる。その夜、全町の屋台が「お花畑」と呼ばれる御旅所に参集する。神輿も渡御し、秩父神社の妙見の女神と武甲山の男神が、年に一度めぐり逢ふのだともいふ。

 秩父神社は「兄の社」ともいはれ、その森を「(ははそ)の森」といふ。

 ○兄の社はこのかみの名か  藤原清輔 
  秩父山 ははその森に言問はん  童     兎久波集の連歌。


犬戻り橋

秩父市

 むかしの秩父神社には広大な神領があり、その片隅に位置した犬戻り橋は、むかしの神域を守る神犬が、神域を忌んでこの橋から外へは決して出なかったことから、橋の名となったといふ。戻り橋の名を忌んで、婚姻の決まった娘たちはこの橋を通ることを避けたともいふ。

 ○渡らじな、これより犬の戻り橋、水をもここに墨染めてけり

 この橋で西行と翁のやりとりした歌も伝へられるが、児童向けではない。