野寺の鐘
新座市野寺
江戸時代の話、新座郡野寺村の畑で、めかご(芋)の蔓のだいぶ大きいのが生へて来た。村の者は、さぞかし芋も大きからうと、掘って見ると、さして大きくもない芋だったので、さらに深く掘ってみると、カチンと音がして、中から古鐘が出てきた。これは「いも鐘」だといふことになったが、鐘には「野本寺」と記してあった。村の満行寺の和尚さんに見せると、これは「野寺の鐘」だといった。この村には昔たいそう立派な寺があって、戦乱の世に火事になったとき、その寺の和尚が鐘を守るために池に鎮めたといふ。その池が長い年月の間に埋まって、今は畑となって、そこから掘り出されたわけである。
○音に聞く野寺を問へば、あと古りて答ふる鐘もなき夕べかな 道興
○武蔵野の野寺の鐘の声聞けば、