さきたま

行田市埼玉

 行田市のさきたま古墳群の稲荷山古墳は、六〜七世紀ごろのものとされ、長文を刻んだ鉄剣が発掘されたことで知られる。埼玉郡は、(古)利根川と(元)荒川に挟まれた地域をいふが、水運を利用して、早くからひらけた土地のやうで、万葉集にも歌はれ、埼玉の県名ともなった。

 ○埼玉の津にをる船の風をいたみ、綱は絶ゆとも、言な絶えそね     万葉集

 ○埼玉の小崎の沼に鴨そ羽根きる。己が尾に振り置ける霜を掃ふとならし 万葉集

 古墳群のそばの前玉(さきたま)神社は前玉姫命をまつる。

 ○和らぐる光を花にかざされて、名をあらはせるさきたまの宮   西行 夫木抄

 ○さきたまの里のとねらが作る木綿(ゆふ)、神の幣帛(にきて)をゆひてけるかも   賀茂真淵