田野武の里

川越市藤倉

 伊勢物語の風流子が、入間郡のみよし野で、ある娘を見初めた。娘の母は、男が高貴な人なので、自分が夢中になって、いつまでもこの里にとどまるやうに頼みの歌を贈った。

 ○みよし野の田の()の雁もひたぶるに君がかたにぞ寄ると鳴くなる  娘の母

 男の答へた歌はそっけないもので、良くあることだと思ってゐるらしい。

 ○わがかたによるとなくなる三芳野のたのむの雁をいつか忘れん  男