熊谷と久下

熊谷市熊谷、久下

 ○うちむれて熊谷をとこ久下(くげ)をとめ、むつましげにもみゆき待つなり

 江戸時代の初めまで荒川の本流はほぼ今の元荒川を流れ、越谷の先で利根川と合流してゐた。それ以前の熊谷近辺は、川の流れの定まらない地で、熊谷氏(直実)と久下氏(直光)での領地をめぐる境界争ひの話が伝はるのは、耕地を荒川に侵食されたためもあるだらう。荒川は熊谷と久下の間を流れてゐた時期もある。久下といふ地名は県内に数ヵ所あり、川のそばが多く、おそらくは、くぐひ(白鳥)の飛来した地の意味だと思はれる。荒川土手には桜が植ゑられた。

 ○行く先も熊谷さくら咲きぬらし、春の眺めは深谷と思へば  置石村路