成就庵

品川区 戸越八幡神社

 むかし戸越村(品川区戸越)の籔清水の池の傍らに小さな草庵があった。大永六年(1526)八月、諸国行脚の僧・行永法師がこの庵に立ち寄った夜のことである。法師が十五夜の月を眺めてゐると、突然、池から清水が激しく湧き出して、水中から何か像のやうなものが現はれた。掬ひあげてよく見ると、八幡大菩薩の神像である。法師はこれを草庵に安置してまつった。以来、願ひごとがよく成就するので「清水の上の成就庵」といはれ、江戸からの参詣人も多かったといふ。

 ○江戸越えて、清水の上の成就庵。ねがひの糸のとけぬ日はなし    古歌

 「江戸越え」から、戸越の地名が起ったといふ。元禄元年に社地を遷して鎮守としてまつったのが戸越八幡神社である。