回文の名手 仙代庵

仙台市

 幕末のころ、仙台城下の荒町に、麹屋勘左衛門といふ酒と学問を好んだ風流人があり、仙代庵と号し、和歌・俳諧の回文の名手でもあった。明治二年没(七十四才)

 ○今朝見たし徳利ぐっとしたみ酒   仙代庵

 ○頼むぞのいかにも二階のぞむのだ  仙代庵

 ○ほかの酒のんで貴殿の今朝の顔   仙代庵

 ○嵯峨の名は宿りたりとや花の笠   仙代庵

 ○わが身かも長閑かな門の最上川   仙代庵

 ○飯前(めしまい)の酒、今朝の戒め       仙代庵(酒に酔って堀に落ちたとき)

 ○はかなの世しばしよしばし世の中は、   (江戸の居候先の主人が死んだとき)

  長し短(ミジ)かししかし短(ミジ)かな

 ○題目よどんどこどんとよく燃いた  仙代庵(お寺の火事のとき)

 仙台と作並(さくなみ)をむすぶ関山街道の道しるべ石に刻まれた歌。

 ○みな草の名は(はく)と知れ、薬なり、すぐれし徳は花の作並(さくなみ)     仙代庵