宮城野・しのぶの姉妹

 ○さまざまに心ぞとどまる宮城野の花のいろいろ、虫の声々    源頼家

 むかし宮城野、しのぶといふ名の姉妹があった。姉妹の父は、田の中から偶然に鏡を見つけたが、その鏡を狙ってゐた男に殺されてしまった。姉妹は、一時は遊女に身をやつしたこともあったが、剣術を習ひ、白鳥明神の境内で見事仇討をとげたといふ。仇の男の名は、志賀台七といふ。事件の原因となった鏡は、志賀台七が、妖術の師であった楠原普伝を殺して奪ったものが紛失してゐたもので、妖術の秘伝に関るものであったらしい。(浄瑠璃「碁太平記白石噺」)

 宮城野の萩は歌枕ともされ、宮城県花でもある。

 ○宮城野の露吹きむすぶ風の音に、小萩がもとを思ひこそやれ   源氏物語桐壷

 ○宮城野の元あらの小萩、露重み風を待つごと君をこそ待て    古今集