河童の本場

 むかし奈良の春日神社の造営のとき、工事がなかなかはかどらなかった。そこで内匠頭(たくみのかみ)の男が九十九体の人形を作って祈ると、人形は童子の姿となって不思議の力を発揮し、たちまちのうちに社殿を完成させた。落成の後、人形を川に流したのが河童になったとのだいふ。河童はのちに人に害を及ぼすやうになったので、匠工奉行の兵主(ひょうず)太夫島田丸が、河童と交渉して河童をなだめしづめたといふ。水辺を通るときなどに河童に足を取られぬために歌ふ歌が、九州に伝はる。

 ○兵主部(ひょうずべ)に約束せしを忘るなよ、川立ち男、氏も菅原      伝菅原道真

 九州は河童の本場で、長崎市の諏訪神社には河童の狛犬もあるらしい。