出雲大社(杵築大社)

簸川郡大社町

 出雲大社は大国主神をまつり、古くは高さ十六丈の天を突くやうな巨大な社殿だったらしい。

 ○やはらぐる光や空に満ちぬらん。雲に分け入る千木(ちぎ)の片そぎ    夫木抄

 崇神天皇の御代に、兄の留守中に出雲大神の神宝を朝廷に献じた(いひの)入根(いりね)は、兄の振根(ふるね)の怒りを買って殺された(日本書紀)。出雲が大和政権に組み入れられたことを意味するやうだ。兄が祭祀の責任者で、弟が政治の責任者だったのだらう。死んだ弟の入根を憐れんで歌はれた歌が、塩冶郷(出雲市南西部)に伝はる。

 ○やつめさす出雲(たける)()ける太刀、つづら(さは)()きさひなしにあはれ

 この歌からすると、出雲の神宝は刀剣であったやうだ。似た歌が古事記にもあり、倭建命が出雲建を倒した話になってゐる。