信太の狐

和泉市葛葉町 信太森神社(葛葉稲荷神社)

 摂津国の安倍保名(あ べのやす な)は、ある日、和泉国信太(しのだ)の森で狩人に追はれた狐を助けたことがある。恩を感じた狐は女の姿となり、「(くず)の葉」と名告り、保名の妻となって一児をまうけた。ある日、庭の菊の花に見とれて狐の本性を子どもに悟られてしまひ、狐は歌を書き残して去っていった。

 ○恋しくば、たづね来てみよ。和泉なる信太の森のうらみ葛の葉

母をたづねたその子は、狐から霊力を授かったといふ。この子が、のちの陰陽の頭、天文博士の安倍晴明であるといふ。