曽根崎天神

北区

 曽根崎は、上古には曽根州(そ ねのしま)と呼ばれた孤島だった。島に一小祠があり、難波八十島祭の一つの往吉住地曽祢の神をまつったことから曽根州の名となったといふ。

 延喜元年、菅原道真が筑紫への道すがら、この曽根崎を過ぎたとき、路ばたの草の露が袖を濡らしたので、歌を詠んだ。

 ○露と散る涙に袖は朽ちにけり。都のことを思ひ出づれば      菅原道真

 この歌から曽根の神は「(つゆ)天神社」と呼ばれ、のちに道真の霊が合祀された。梅雨入りのころ境内から清水が涌き出たので「梅雨(つゆ)の天神」といったともいふ。地名から「曽根崎天神」とも呼ばれ、近松門左衛門の「曽根崎心中」(お初徳二郎)の舞台となったことから「お初天神」とも呼ばれる。上田秋成は曾根崎生まれ。