道明寺天満宮

藤井寺市道明寺

 菅原道真公が太宰府へ赴任するとき、難波から内湾を通って南河内の道明寺(藤井寺市)へ向かふ船の中で歌を詠んだ。

 ○世につれて浪速(なには)入江もにごるなり。道明らけき寺ぞ恋ひしき    菅原道真

 道明寺に住む伯母の覚寿尼に、暇乞ひをするために立ち寄ったのである。一泊して、まだ夜の明けぬころ、鶏が鳴いた。

 ○鳴けばこそ別れも憂けれ。(とり)の音の聞えぬ里の暁もがな      菅原道真

 早く鶏が鳴いたため、道真は、不満足な思ひで旅立つことになった。以来、里人は鶏を飼はず、今も鶏の肉を食べないといふ。「鶏が鳴けば神は帰らねばならぬ」(折口信夫)といふ古代の信仰が考へられる。また同族の土師氏がまつったともいふ埼玉県の鷲宮神社など、土師氏菅原氏と鳥との縁も想像される。道真公は道明寺天満宮にまつられてゐる。