蟻通明神

泉佐野市長滝字蟻通 蟻通神社

 蟻通(ありとほし)神社(泉佐野市)は大名持(おほなもち)命をまつる。

 むかし紀貫之が、和歌の神で知られる紀州の玉津島神社を参詣した帰りのこと、和泉国で急に日が暮れて雨模様となり、馬が死にさうになった。その土地の神である蟻通し明神のなせるわざであると聞いて、次の歌を読んで奉納すると、馬は回復したといふ。

 ○かき曇りあやめも知らぬ大空にありとほしをば思ふべしやは 紀貫之
  (有りと星、蟻通し をかける)

 次のやうな伝説もある。
 むかし唐から七曲りの細穴を抜いた玉が贈られて来たが、誰もこの穴に緒を通すことができなかった。ある老夫婦の智恵により、蟻の腰に糸を繋ぎ、蜜を反対側の穴の口に塗って蟻を這はせ、見事に糸を通すことができた。それ以来わが国でも老人を大切にするやうになったといふ。この老夫婦に孝養を尽くしてきた某中将は、のちに神と崇められ、蟻通の明神にまつられたといふ。

 ○七曲に曲れる玉の緒を抜きて、ありとほしとも知らずやあるらん  中将の神