いさな取り

 新続古今集の玉津島明神を歌った歌。允恭紀にもある。

 ○とこしへに君も逢へやも、(いさな)取り海の浜藻の寄るときどきを   新続古今集

 「いさなとり」は海にかかる枕詞とされ、いさなは鯨の古語である。季節を定めて近海に現はれる鯨は、海の豊漁をもたらす神とされた。実際に鯨は餌となるべき小魚の群を追って近海に現はれることが多く、集まった魚の群が豊漁をもたらしたのである。捕鯨が行なはれるときも、食肉用、鯨油用、その他、鯨は全ての部分が無駄なく利用され、鯨は一頭捕れば七浦が栄えるともいはれた。新宮市三輪崎の八幡神社の鯨踊は、鯨の捕獲と豊漁を祝ふ祭であり、鯨の供養の祭でもあった。鯨を供養した塚は全国にある。アメリカでは油とひげ以外を全て廃棄した長い乱獲時代の反省もあり、石油やプラスチック製品で代用できるやうになって捕鯨が全面禁止され、これが欧米主導による国際標準とされた。太地町には鯨博物館がある。