玉津島神社

和歌山市和歌浦

 和歌の神ともいはれる玉津島神社は、もと玉出(たまづ)島といったらしい。

 ○年を経て波の寄るてふ玉の緒に抜きとどめなん。玉出づる島    宇津保物語

 むかし聖武天皇が紀州に行幸されたとき、玉津島神社の背後の奠供(てんぐ)山に登られ、和歌浦の海の眺望を賞でて「明光浦」の名をつけられたといふ。そのときの従者の歌。

 ○玉津島。見れども飽かず。如何にして包み持ち行かむ。見ぬ人の為  藤原卿

 聖武天皇はたびたび紀州に行幸され、神亀元年(724)のときには、山部赤人が鹽竃神社付近で詠んだ歌がある。鹽竃神社は、元は玉津島神社の祓所であったといふ。

 ○和歌の浦に潮みち来れば、潟を無み葦辺をさして鶴鳴きわたる   山辺赤人