浅妻舟

坂田郡米原町朝妻

 朝妻(米原町朝妻)は、琵琶湖の東にそそぐ息長川の河口に開けた古代の港町であった。慶長のころに米原の港ができるまでは、「本朝遊女の始まりは、江州の朝妻、幡州の室津」(好色一代男)といはれたほどの繁昌をきはめた。町の遊女を歌ふのに浅妻舟といふ言葉もできた。

 ○おぼつかな。伊吹颪の風さきに、浅妻舟(あさづまぶね)は逢ひやしぬらん     西行

 ○この()ぬる浅妻舟の浅からぬ契りを誰にまた交はすらむ      也足軒通勝卿

 柳の下の繋舟に、金烏帽子に水干を着けた白拍子が、鼓を持って乗る浅妻舟の絵は、浮世絵などの画題としても好まれた。米原町磯崎神社付近の琵琶湖を歌った万葉歌。

 ○磯の崎漕ぎたみゆけば、淡海の海、八十のみなとに鶴さはに鳴く  高市黒人