余呉湖

 琵琶湖の北に余呉湖といふ小さい湖がある。むかしこの湖に、天から織女が舞ひ降りて水浴びをしたとき、きりはた太夫といふ男が天の羽衣をどこかへ隠してしまった。天へ帰れなくなった織女は、太夫の妻となって、一児が生まれた。その子も大きくなったある夜、母が天を眺めながらため息をもらすと、子は母のために羽衣を捜し出して来た。そして母がいふには、年に一度、七月七日に湖の水を浴びて待てば、必ず逢ひに来ると約束して、天に帰って行った。 ○余呉の湖、きつつなれけん。乙女子が天の羽衣ほしつらんやは  曽丹集

 天正十一年の賎ヶ岳の戦では、柴田勝家は柳ヶ瀬峠に、羽柴秀吉は木之本に陣を構へた。