布袋丸

大津市 石山寺

 むかし存如上人が石山寺に詣でたとき、ある女性とめぐりあひ、男の子が生まれたので、布袋丸と名づけた。布袋丸が六歳のとき、母は、「鹿の子の小袖と絵姿、これがある場所がわたしの浄土です」と謎のことばと歌を残して、いづこかへ去って行った。

 ○恋しくばたづね来てみよ、唐橋の石立つ山は母のふるさと

 布袋丸はひたすら修行を重ね、蓮如と名告る立派な僧になった。三十二歳のときに北陸行脚の途中、立ち寄った石山寺で見なれた鹿の子の小袖と絵姿を見つけた。幼い日に別れた母は、石山の観世音菩薩だったことを悟り、念珠を供へたといふ。

 石山寺では、紫式部が籠って源氏物語を書き始めたといふ伝説がある。