奥三河

 南設楽郡鳳来町の鳳来寺に、むかし矢作長者が子授けの願掛けをすると、薬師瑠璃光如来が白鹿となって現はれ、珠を授けた。月満ちて生まれたのが浄瑠璃姫であるといふ。浄瑠璃姫は、白鹿の子なので足の指が二本しかなく、母は足袋を考案して姫にはかせたといふ。

 北設楽郡の花祭は、霜月神楽ともいひ、もと旧暦十一月に行なはれ、翌年の豊作を予祝するものといふ。花山院の御霊をとむらふともいふ。

 ○熊野山、切目が森のなぎの葉をかざしになして御前まゐるら    神詠

 ○いやはてに鬼はたけびぬ。怒るときかくこそ古へびとはありけり  釈迢空