熱田の二十五丁橋

名古屋市熱田区

 ○宮の熱田の二十五丁橋で、西行法師が腰を掛け、東西南北眺むれば、

   これほど涼しいこの森を、誰が熱田と名を付けた。       名古屋甚句

 西行法師が出家して東国の旅に出たとき、夏のある日、熱田の二十五丁橋のたもとまで来て休息をとり、歌をよんだ。

 ○かくばかり木陰すずしき宮立ちを、誰が熱たと名づけ初めけむ   西行

 するとどこから歌が返ってきた。

 ○やよ法師、東の方へ行きながら、など西行と名告り初めけむ

 西行はきまり悪さうにして、そそくさと立ち去ったといふ。この橋は、二十五枚の石板を並べた太鼓橋で、神宮をめぐる堀にかけられてゐた。

 ○ます鏡てる日の影も知らぬまで、熱田の森は繁らひにけり     海量