浄瑠璃姫

岡崎市明大寺

 むかし源義経が奥州下向のとき、三河国の矢作(やはぎ)長者の家の近くを通ると、夕暮にどこからか美しい琴の音色が聞えてきた。琴の音にあはせて義経が笛を吹きながら歩いて行くと、長者の娘、浄瑠璃姫の家の窓の下に行き着いた。姫は義経を部屋に導き入れ、いつまでも曲を和してゐたが、翌朝、義経が旅立つとき、再会の約束に「薄墨」と名づけたその笛を姫に預けて別れた。しかし義経は奥州衣川で戦死し、その知らせを聞いた浄瑠璃姫は、菅根川に身を投げて死んだといふ。この話が「浄瑠璃物語」として語られ、浄瑠璃の起源となった。

 ○笛の音は垣根ごしから問薬(とひぐすり)       (川柳)