水無神社の神馬

高山市

 昔ある秋に、村の作物がたびたび喰ひ荒らされた。村人は、田畑を荒らすのは水無神社の神馬ではないかと噂した。なるほど左甚五郎の彫った馬は生気に満ち、今にも暴れ出しさうであった。しかし神社の神馬を破壊するわけにはいかない。噂は神官の耳にも達した。神官は村人の不安を察して、名工を呼んで神馬の両眼をくりぬき、目が見えぬやうにした。これ以来、田畑が荒らされることはなくなったといふ。

 ○宮作る飛騨の匠の手斧の音、ほとほとしかる、めをも見しかな   拾遺集

水無神社は、水無(みなし)の神をまつる飛騨一宮。