信夫のもぢずり絹
福島市山口文知摺観音
みちのく信夫の絹織物「もぢずり絹」は、「みだれ染め」といはれる模様に特色がある。模様染めの型に使ふ石を、文知摺石といひ、この石に草木の色を付着させて、さらに布に写して染める。古く天智天皇のころから土地の名産として都に献上されたといふ。
むかし中納言河原大臣
○みちのくのしのぶもちすり、誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに 源融
(陸奥の信夫を思ひ文知摺の模様のやうに思ひ乱れる我は、他のどの女のせいでもない)
虎女は中納言の心が嘘でなかったことを知り、安らかに息を引き取ったといふ。長者は娘を哀れんで、願を掛けた観音堂近くに塚をつくって埋葬したといふ。
○早苗とる手もとや昔しのぶ摺 芭蕉