安達ヶ原

二本松市東部、阿武隈川南岸

 安達ヶ原には古くから鬼が住むといふ伝説があり、拾遺和歌集にも詠まれた。

 ○みちのくの安達の原の黒塚に鬼こもれりと聞くは、まことか   平兼盛

 むかし熊野の山伏が旅の途中、安達ヶ原で日暮れになり、一つ家に宿を乞ふと、老婆が一人で住んでゐた。夜中に物音が聞こえ、山伏が老婆の部屋をのぞくと、部屋は人の死骸の山だった。これまでに宿をとった旅人たちのなれの果てのやうだった。驚いて逃げ出す山伏を、老婆は鬼女の正体を現して追ひかけ、食ひ殺さうとしたが、山伏は必死で祈祷を続け、鬼女を倒すことができたといふ。(謡曲「安達原」)