勿来の関

いわき市勿来

 陸奥の磐城国の入り口にあった関を、勿来(なこそ)の関といふ。「蝦夷人の来る(なか)れ」といふ意味で名付けられたといひ、歌に詠まれるときは、「来るな」の意味にちなんで詠まれる。

 ○東路は勿来の関もあるものを、いかでか春の越えて来つらん   源師賢

 ○みるめかる海人の行き交ふ湊路に、なこその関も我は据ゑぬを  小野小町

 ○のど病みて旅は勿来のせきに来て、はな散るかぜをたれかしるらん  狂歌

 白河天皇の御代に、源義家が、奥州を平定した帰途に、勿来の関で詠んだ歌はよく知られるところである。

 ○吹く風を、勿来の関と思へども、道も()に散る山桜かな     源義家