壱岐

 むかし遣新羅使の一人が壱岐島で急死したときの挽歌が万葉集にある。

 ○新羅へか、家にか帰る。壱岐の島。行かむたどきも、思ひかねつも 万葉集

 次の歌は壱岐郡郷ノ浦町あたりを旅したときの歌ともいふ。

 ○葛の花踏みしだかれて色あたらしこの山道を行きし人あり   釈迢空

 郷ノ浦町の天手長男(あめのてながを)神社は、神功皇后が新羅征伐のときに寄港した地といふ。筑紫の鐘ノ岬で武内宿禰が織った赤白の旗を、手長(てなが)といひ、これを船に立てて渡航した。この旗は帰国したときに壱岐の天手長男神社と天手長比売神社にまつられたともいふ。