岩手山 ちゃぐちゃぐ馬こ

岩手郡

 岩手山麓の滝沢村の駒形神社では、旧暦五月五日に、農耕馬を衣装で飾り、幼児を乗せて行列を組んで参詣する「ちゃぐちゃぐ馬こ」の行事がある。二百年の歴史があるといひ、馬の産地らしい田の神の祝福行事なのだらうが、民謡の「ちゃぐちゃぐ馬こ」は昭和三十年代に新作されたものである。お山とは岩手山のこと。啄木の歌も同じ。

 ○馬こ嬉しか、お山へ詣ろ、金の(くつわ)に染め手綱          小野金次郎作詞

 ○ふるさとの山に向ひて言ふことなし。ふるさとの山はありがたきかな 石川啄木

 滝沢村にある岩手山神社(岩手権現、田村神社)は、坂上田村麻呂将軍が、岩手山に立て篭った賊・赤頭の高丸を討伐したときの御陣小屋の跡にまつられたといふ。登山のときには「田村の権現、野木の王子」と唱へるといふ。