小野小町の難病

倉敷市

 京の都で、あるとき小野小町が皮膚病を患ひ、顔が腫れ物だらけになってしまった。倉敷の法輪寺に詣でて祈りを続けたが、いっこうに良い兆しは見えなかったので。歌を詠んだ。

 ○南無薬師、諸病悉除の願立てて、身より仏の名こそ惜しけれ   小野小町

 七日目は小雨だったので蓑笠を着けてお詣りをすると、どこからか歌が聞えてきた。

 ○村雨はただひとときのものぞかし、おのが蓑笠(身の瘡)そこにぬぎおけ

 小町が蓑笠を脱いで傍らの松の枝に掛けると、顔の腫れ物はたちまち消えてなくなった。このとき小町が自分の顔を映して見た井戸が、寺の裏山に今も残る「小町姿見の井戸」である。これに似た話は全国にあり、和泉式部の話(日向国など)になってゐる場合が多い。