坂上田村麻呂とねぶた

 青森県のねぶた祭に歌はれる歌は、むかし坂上田村麻呂将軍が、八甲田山の蝦夷をおびきよせたときに兵士に歌はせた歌といはれる。

 ○ねぶた流れろ、忠臣(まめのは)とまれ、ださはせよだせよ

 ねぶたは旧暦七月(現在は八月)一日〜七日の行事であるが、古い素朴な形としては「草ねぶた」といって、子供たちが木の枝の先に灯籠を下げて七晩家々を廻り、七日目にそれを海に流すといふ、盆迎への行事だったらしい。各地の「七晩げ」の行事も類似のものである。

 東北地方には坂上田村麻呂が創建したといふ神社仏閣は多い。弘前市津賀野の三日月神社も、田村麻呂将軍の創建といふ。鎌倉時代に、出家の身の北条時頼が諸国を巡ったとき、三日月神社を詣でて詠んだといふ歌がある。

 ○みちのくの津軽の野辺の花ざかり げに日之本の錦なるらん   北条時頼