日之本将軍、

十三湊(じゅうさんみなと)、岩木川

 十三湊(十三湖)は、岩木川の河口にある波の静かな入り江で、かつては大型船の出入りする津軽地方の玄関口だった。岩木川を遡って浅瀬石(あせんし)川の合流する藤崎の地が、鎌倉室町時代に日之本将軍として勢力をほこった安東氏の本拠地である。安東氏は平安時代の安倍貞任の子孫ともいふ。

 ○十三(とさ)の砂山米なら良かりょ、西の弁財衆にみな積まそ      民謡

 民謡の「十三の砂山」は国内船の弁財衆(船頭)たちによって南から移入された曲調による十三地方の盆踊唄である。十三湊にはさまざまな船が出入りしたが、安東氏は、日本国内だけでなく、直接大陸と大規模な貿易をしてゐたらしい。岩木川上流の岩木山には、安寿と厨子王の伝説がある。岩木山神社の祭神のうちの国安珠姫(くにやすたまのひめ)神は、安寿姫のことともいふ。