真吉水也

北宇和郡三間町

 戦国のころ、今の北宇和郡三間町土居のあたりを領してゐた土居清良の家臣に、真吉水也といふ侍があった。水也は、悪疾を煩ひ、宮下の谷に隠居して暮らしたが、主家への忠誠心に変りはなかった。庵の壁に貼られた歌がある。

 ○雨あられ雪や氷とへだつれど、解ければ同じ谷川の水      真吉水也

 水也は、病で動かぬ指に筆を縛り付けて、主君の事蹟を綴った『清良記』を著はした。またあるとき扇の要の形から新しい測量法を発見し、弟の甚左衛門に伝授したといふ。