高千穂

西臼杵郡高千穂町ほか

 瓊瓊杵(ににぎ)尊の天孫降臨の地といはれる高千穂峰は、伝承地が県内に二ヵ所ある。

 一つは西臼杵郡高千穂町の二上山で、麓に高千穂神社(二上神社)がある。源頼朝の代参に詣でた畠山重忠が植ゑたといふ秩父杉が、八百年後の今に伝はる。古い鉄製の狛犬も重忠公ゆかりのものといふ。

 ○高千穂の二上見れば、すめがみの天降りましけむ古へ思ほゆ  鹿持雅澄

 ここから五ヶ瀬川を下ると、速日峰があり、饒速日(にぎはやひ)尊が天降った地ともいふ。

 ○速き日の峰から明けて国の春   露傘

 もう一つは鹿児島県境の霧島連峰の高千穂峰で「雲に聳ゆる高千穂の」と唱歌に歌はれた。幕末以後の「雄大」を好む傾向の歌はこちらを詠んだものである。

 ○皇神の天降りましける日向なる高千穂の嶽や、まづ霞むらむ  楫取魚彦

 霧島六社権現は平安時代に性空上人によって開かれたといふ。付近には奇岩と称するものが多く、小林市東方の石瀬川の陰陽石を歌ふ歌もある。

 ○浜之瀬川には二つの奇石、人にゃいふなよ語るなよ      野口雨情