祖谷のからうた姫

西祖谷山村 若宮神社

 平家の落人の村といふ西祖谷山村には、南北朝のころ土佐の幡多郡有井荘に流された尊良親王の妃加良歌(か ら うた)姫の伝説がある。当地の話では、姫は親王の後を追って赤子を抱いて阿波へ渡り、陸路土佐をめざしたが、祖谷の地で吾が子を死なせた。この地に吾が子を葬り、更に土佐へ行ったが、既に親王は九州へ渡ったあとだった。再びもと来た道を戻り、わが子の墓所のある祖谷の里でちからつきて死んだといふ。母子は若宮神社にまつられた。

 ○心なき雲こそ渡れ。鳥すらもい行きはばかる峰のかけ橋

 ○祖谷のかづら橋ゃ蜘蛛の巣のごとく、風も吹かぬにゆらゆらと  祖谷の粉挽唄

 祖谷のかづら橋は、十丈余の谷に藤蔓だけで作られた橋で、里人は危険を恐れて下を渡ったといふ話もある。

 ○辺りにはたえず平家の物語、いとおもしろき琵琶の滝つ瀬    浪花桃苗