阿波の殿様

徳島市

 天正十三年、関白に就任した羽柴秀吉は、四国を統一したばかりの長宗我部(ちょうそ か べ)氏を敗って四国を平定し、臣下の蜂須賀家政が阿波を領した。徳島城が築かれ、それを祝って町民が踊ったのが阿波踊りの始りといふが、実際はもっと後世のものらしい。

 ○阿波の殿様、蜂須賀公が、今に残せし阿波踊り         阿波踊り

 徳島市中常三島町の神明社は、以前は城山の頂上にまつられてゐたが、蜂須賀公のときに現在地に移されて、城の守り神となった。神明社の御神木の真柏は、ヒノキ科のミヤマビャクシンといふ常緑樹で、縁結びの神木といはれる。

 ○神明に誓って祈る願ひなら、縁を結びの庭の真柏(ま がしは)

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 徳島市は昔の加茂郷の地で、海神の娘・豊玉姫と結婚した鸕鷀 草葺不合(う がやふきあへず)命の歌に歌はれる「かもとく島」は、加茂郷徳島の地だともいふ。

 ○沖つ鳥、鴨とく島に我が率寝(ゐね)(いも)は忘れじ。世のことごとに   鸕鷀 草葺不合命