三年寝太郎

厚狭郡 寝太郎荒神

 厚狭(あさ)郡山陽町あたりに、むかし寝太郎といふ男が住んでゐた。働くことをせず、三年三月のあひだ寝て暮らして、蓄へをすべて食ひつぶしたといふなまけものだった。ところが寝太郎は、厚狭川の中流の柳瀬の堰から水路を引くことを考へ、それを実行して、のちに千町(せんちょう)ヶ原と呼ばれた厚狭盆地の美田地帯を作ってしまったのである。寝太郎は、厚狭駅の南の寝太郎荒神にまつられてゐる。

 ○あさもよし、さ寝てし居れば、三月つき三とせに流る、ゆふ襷かな

 荒神とは、竈の神を意味することも多いが、中国地方では、土地や家の守り神でもあり、農業や路傍の神でもあり、関東の稲荷様に似たものらしい。真言宗の影響で広まったともいふ。