福浦の腰巻地蔵

羽咋郡富来町

 北前船で賑はった能登の富来(とぎ)町、福浦の港には、遊女の街が栄えた。遊女のことを土地の言葉でゲンジョといった。むかし一人のゲンジョが、なじみの客との別れを惜しみ、少しでも長く港に留めるために、海辺の地蔵さまに腰巻を掛けた。すると海が荒れ、船は出帆をとりやめたといふ。腰巻地蔵といふ。

 ○能登の福浦の腰巻地蔵は、けさも船出をまたとめた        野口雨情