いちばん古い七夕の由来

日本の古い年中行事は、1年をきっちり半分に分けたとき、1月からの行事と7月からの行事で、似通ったものが2回繰り返されるといわれます。
たとえば7月15日のお盆と1月15日の小正月、どちらも祖霊祭に原義があります。半年を周期に年月の流れをとられていたからだといわれるわけです。
では7月7日の七夕は、1月のどんな行事に似ているでしょう。
それは、若水汲みになります。

吉成直樹『俗信のコスモロジー』(白水社1996年)に沿って紹介しましょう。
高知県などでの七夕に関する俗信の調査によると、
  里芋の葉にたまった水を集めて顔を洗うと肌が綺麗になる。
  その水でイボや傷・吹き出物につけると直る。
といったことが言われます。他には「その水で墨をすって字を書くと字が上手なる」というのもありますが、これはこの日に技芸の上達を祈るという中国の乞巧奠の影響だろうということです。
里芋の葉の水とは、天から落ちてきた水だと考えられました。そして肌や皮膚に関して人が若返るという信仰は、盆に備えるために禊で清めるというものとは異質のものだろうといいます。皮膚が若返るとは、脱皮を意味するもので、水神=蛇を模したものです。その水神は天に住んでいるのだという信仰なのです。

同じ調査では、6日の晩に14歳以上の未婚の少女たちが一つの宿に集まって、夜を通して、苧(お)を績(う)む行事があったと報告され、かつては全県で同様の行事があったといいます。「苧を績む」とは麻の繊維から麻糸を作ることです。
辞書によれば「苧績み宿」「糸宿」ともいい「娘宿の一。夜間、娘たちが集まって麻糸を紡いだり糸引きの仕事をしたりする集会所。糸引き宿。よなべ宿。」(大辞泉yahoo版)と説明され、全国的な民俗だったようです。
機織りについて糸を績むことと類似の行為と見てよいと思います。

七夕とは、神を祭る棚機姫(たなばたつめ)と呼ばれる女性が、水辺の棚の上で、機を織りながら、神の来訪を待つ神事だといわれます。それは選ばれた特別の女性のようなイメージなのですが、村のすべての少女が集団で行なってきたことだったのです。
七夕の伝説が一人の美しい女性の物語となっていったのは、物語だからそうなったといえばそれまでですが、神に選ばれたという結果から解釈された物語なのかもしれません。神に選ばれたとは、つまり毎年の糸引きや神祭りを続けることによって誰もが結婚の資格を得ていったということなのでしょう。
まだ学校のなかった時代ですから、娘宿では機織などの他にも学ばねばならないことはたくさんありました。あるいは春先には、日中に外へ出て若菜を摘んで自炊したり、さまざまな経験をするところが娘宿だったようです。
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