読みやすい印刷用書体とは

地方のある研究者の本の印刷文字が、丸ゴシックのようなメイリオのような書体だったので、奇妙に思った。おそらく世間で「読みやすい」といわれる書体だから、そうしたのではなかろうか。
だが最近の「読みやすい」というのは意味が違うのであって、メイリオなどはスマホで読みやすいとされる書体であろう。昔のワープロなどは印刷は明朝体でも画面表示は16pxのゴシック体が標準だった。ゴシックよりも横長で中央を魚眼レンズのように拡大した新聞活字に近いデザインの書体が、小さい文字でも「読みやすい」とされている。
また、新聞活字では、「目」と「日」を誤認しないように正方形のマスいっぱいに大きくデザインする傾向がある。「江」なら「工」の部分を縦いっぱいに大きくし、「戸」ならまん中の「口」を大きく強調する。画像の例では「平成明朝」にもこの傾向があることがわかる。游明朝にもその傾向がある。極小の字なら、読みやすいかもしれないが、普通サイズの字については疑問である。
fontW5 Demibold は太字のこと。

読みやすい書体の条件とは何か。いろいろな見方があるだろうが、速読での読みやすさというのは重要であろう。
速読では漢字の一画一画を確認するのではなく、また異体字の区別も重要ではない。文字全体の輪郭が重要で、四角いマス内の周辺部分の余白の形や配置なども重要である。昔の活字や写植文字は、そのようにデザインされてきた。それを最も継承しているのが、PC環境では、MS明朝であろう。

また、画像の「江」のように、MS明朝のやや縦が短く横に長いデザインが見やすい。漢字は「健」や「康」などのように、縦線より横線が多い字が多いのだから、縦長に書いたほうが他の字と区別しやすいのでは?、と思いがちだが、そうではない。
おそらく、漢字は偏と旁の左右の要素に分けられるものが多いので、全体をやや横長にすると、左右の各要素の変形の度合いが少なくなり、たとえば「工」と「江の中の工の部分」とは、相似形に近くなる。とくに旁の部分が縦に細長く変形しては認識しづらい。つまり、前述したように、輪郭認識なのである。
一画一画を認識しながら最終的に一字の認識に到達するというのは、漢字をおぼえたての小学生なら、そういうのもありうるが、普通は、漢字というのは一瞬で認識できなければ、文章はすらすら読めるものではない。

次に、文書の見出しなどで使う強調文字について
明朝体の太字は、MS明朝をワープロソフトの編集時に太字(Bold)に設定したのでは、くっきりした印刷文字にならない。太字用の書体、いわゆるフトミンの書体がを選べば、かなり違ってくる。本文のMS明朝とは多少デザインが異なる見出し文字になるのもやむをえないだろう。
ゴシック体については、印刷ではMSゴシックが良いわけだが、ディスプレイ表示では何故か太い字で表示されない。編集画面では、どの文字がゴシックなのかわかりづらい。ここは游ゴシックを使うしかないようだ。上の画像の例では、表示ではかなり太さが違うが、印刷ではMSゴシックも太く印刷される。

蛇足になるが、手紙や葉書の宛て名で、毛筆体というのも、変な字が多い。楷書体が、良いと思う。楷書体は、名刺や冠婚葬祭の案内状・礼状などで長い歴史があり、洗練されたデザインで見やすい字である。
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