神話の森のブログ

日本の神話や民俗、また近世農村研究

成長する石の伝説


むかし信州伊那郡の今田村というところで、娘が天竜川の河原で綺麗な小石を拾って袂に入れて帰ろうとすると、途中で石が大きくなり、驚いて水神の社のそばに石を放り投げたところ、その後も石は大きくなり続け、今は巌のようになっているという(柳田国男『日本の伝説』による)。

あるいは、ある石を一晩見ないでいたら大きくなっていたという伝説もあります。石が成長することもあるわけです。ですから長い年月のあいだには、小さなさざれ石も巌となるわけで、「君が代」ではそのことを歌っています。民俗学者はみなそう言います。巌になるまでの年月は、千代ないし八千代で、五劫の擦り切れとは逆の話になります。

  わが君は、千代に八千代に、さざれ石の巌となりて、苔の生すまで  古今集

急に成長するような石も稀にあるのでしょうが、実際はなかなか石の変化はわからないかもしれません。石の大きさの変化がわかるためには、今の石をじっと見つめて、その色や形や大きさなど全てを正確に頭に入れて認識しておくことが必要かも。アフリカの狩猟民族の視力は2.0以上だといいますから、人間にできないことはないのでしょう。
認識能力が落ちてきた現代の人間の場合は、石の大きさの変化に気づくのにかなり長い年月を要するかもしれません。20年になるか30年になるかわかりませんが、そんなに長い間、記憶を保持できるでしょうか。結局大事なのは、幼いころの記憶を忘れずにいる能力なのかもしれませんね。

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