風が吹いたら桶屋が儲かる

風が吹いたら桶屋が儲かる」という小咄がある。
なぜそうなるかというと。
風が吹くとほこりが立つ。ほこりが人の目に入って失明する人が増える。すると三味線弾きが増え、猫の皮を使うので猫が少なくなる。そして鼠が増え、鼠が桶をかじるので桶屋に桶の注文が絶えないというわけである。

眉唾ものの論理解釈のたとえに、使われることもあるようである。
『国家の品格』(藤原正彦著)という本では、埃が立つ確率が何パーセント、目に入る確率が何パーセント、失明する確率が……というふうに、低い確率がさらに低くなって桶屋が儲かる確率は極めて低いという説明がされている。
しかし残念ながら「風が吹くと」以下すべての現象を、同一原理で価値を数値化して白黒を付けるというのはどうだろうか。いかにも今風の論理になる。

そこにはアスファルトのない土の世界や、医療の発達していない社会、目の見えない人が三味線弾きとなって生計を立てていた時代が見える。もちろん確率は低いのだが、「棚からぼたもち」のような意味合いでは今でも庶民には好まれる話である。

また自分がどうして儲かったかを自慢げに語る人の話というのは、そうは信用できるものではなく、他人からみれば風が吹いたらの話のように聞える。単に運が良かっただけのことを、さも自分の行ないの結果であるかのように説明しているにすぎないのだろうと。
金儲けに本気で熱中している人には、こういう話が楽しめなくなっているかもしれない。
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Comments

橘 正史 | 2006/04/30 14:45
はじめまして。

日々是桜さまのBLOGから飛んできました。

拝見して思いましたのは、「皇室典範に関する有識者会議」報告書の中の出生率の計算についてでした。男系継承が綱渡りのようなものだということは、今にはじまったことではなく、マイナス要因ばかりでなく、嬰児死亡率は往時とは比較にならないほど低下しているということを思えば、単純な計算はほとんど意味をなさないと思われますが、複雑多岐に渡る世の現実の要素の多くを無視して幾つかの特定の事象に物事を絞り込み、それだけを詳しく論じることによって独断を下すというやり方は、この問題に限らず、最近つとに見かけるようになったような気がします。
森の番人 | 2006/05/04 11:37
一般論としては、情報にふりまわされやすい時代に、何が大事かを選別することは必要なことです。
ただしその場合に現代人はとかくオタク的なところがあって、本筋とは違う部分に妙なこだわりを持ちがちです。それは現代男性に多いようですが、そのこだわりが専門研究の成果をもたらすことは良いことなのですが、そこで得た論理のようなもので何もかも裁こうとすると破綻の傾向があるかもしれません。
そこで、研究対象を限定した論理として従来通りすすめるのも良いのでしょうが、その論理そのものの再検証を心がけることも必要なのではと思います。無論、オタク的発想で外に切り込んでゆくのは品を下げます。

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