桜が散る

桜北国をのぞけば日本の桜の時期ももう終りである。
桜は日本人に最も好まれてきた花であるともいえる。「散り際がよい」などという言い方をされることもあったが、そういったことよりも、春の到来を告げる花であり、その一年を占う花、また農耕儀礼などにも深く関わってきた花である。
近世までは、ヤマザクラという品種がもっとも親しまれていたといい、山間部に咲く白っぽい花だったらしい。開化時期には山の色が変化していって花の色で埋まる。そのふもとでの人々の生活があったのだろう。

桜の散る歌ですぐ思い出すのは、百人一首の有名な歌。

 ひさかたの光のどけき春の日に、しづ心なく花の散るらむ  紀友則

しづごころ(静心)とは「しずかな心。おちついた心」(広辞苑)とある。のどかな春の日だというのに、しづ心もなく花は散るのだろうという。
乱れる恋心を詠んだようにもとれるし、自分のところに落ち着かずに離れていってしまう相手のことを詠んだようにもとれる。
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