神話の森のブログ

日本の神話や民俗、また近世農村研究

こぶとりじいさん


数日前に見たテレビアニメの再放送「日本まんが昔ばなし」の「こぶとりじいさん」は出来の良いものだったと思う。
野村敬子氏の書いたもの(平凡社世界大百科事典)であらすじをおさらいしてみる。

「頬にこぶのある爺が,山中の洞穴で雨宿りするうちに鬼・天狗の酒盛りに迷い込み,舞や踊りを披露して鬼などの歓心をかう。再び来る約束のためにこぶを取られるが,爺は大喜びで帰る。 それを隣の爺が真似する。しかし舞や踊りがへたであったので鬼は喜ばない。質ぐさに取った前の爺のこぶまで付けられて,泣きながら帰る」

アニメの話では、じいさんが雨宿りをしたのは洞穴ではなく大きな木のウロの中で、そこでうとうと居眠りをしたのだった。昔話の細部には異伝が多いわけである。鬼の酒宴は夜明けの鶏が鳴くまで続いた。

母なる大樹の懐の穴に、翁はからだを胎児のように丸めて居眠りをしていた。「鶏が鳴いたら神は帰らなければならない」と言われるように、鬼たちは遠い昔の神々のようでもあり、翁は里人を代表してウロの中でおこもりをして、祭にそなえたのである。何か古い祭祀の形をそのまま伝えているような話だった。
おこもりをして翁は生まれ変わった。それが証拠に、こぶが取れている。こぶとは皮膚にふりかかった災いのことだろうし、こぶが取れるとは脱皮することでもあるのだろう。

日本人は肌のみづみづしさにことさらこだわってきた人種かもしれない。もちろんそれは、現代の日本人女性の中にもはっきりと受け継がれているが、男性たちも美容以前の問題で昔はかなりこだわったのかもしれない。

こぶとりじいさんの話は、最近ブログに書いたテーマといくつか結び付くものがあるような話だった。
ウロの中が異界に通じているような話でもあった。

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コメント

雪月花 | 2005/11/12 21:41
こんにちは。「まんが日本昔ばなし」の再放送がうれしくて、子どものころよりずっと真剣に見ています。鬼や山姥が出てきたり、風神が子どもを連れ去ったりと、昔からの伝承や単純な勧善懲悪の物語が楽しいですね。たくさんの子どもたち、そしておとなにも見てほしい番組です。

「こぶとりじいさん」では木のウロにおこもりすることが異界への橋懸りになっているのですね。鬼やおヘソを取る雷神など子どものころはコワイものがたくさんありましたけれど、今ではコワイのは老後だけ‥ などと、友人が言っております(笑
森の番人 | 2005/11/13 00:48
雪月花さん、こんばんは。初放送のときは見ていなかったのですが、改めて見ると良いものです。子どものころは楠山正雄の昔話の再話の本を何度も読みました。
異界というか、いつもそういう世界と隣りあわせの暮らしが普通だった時代があったのだと思いますが、今の生活でも一瞬そういうのが頭をよぎることもあると思います。
自然の力にしろ恐い体験があったほうが人間の心は豊かになると思います。老化もそういうことなのかも
Naoko | 2005/11/18 20:05
はじめまして!こんばんは。
私も「まんが日本昔ばなし」を見ました。
最近、民俗学に興味があるので、昔話にも関心があります。
恥ずかしいことに、こぶとりじいさんの話の中身を知らなかったんです…。
だから楽しく見れたし、「こんな話だったんだ」って感心しながら見ていました。
小さい頃から何気なく知っていた昔話も実は奥の深い話なんだなって、最近勉強するようになって思いました。
民俗学に関してはまだまだ未熟なので、これからもブログを参考にさせていただきますね♪
よろしくお願いします!
森の番人 | 2005/11/18 23:59
Naokoさん ていねいなコメントをありがとうございます。
私もこぶとりじいさんの話はうろおぼえだったのですが、記事の中に「あらすじのおさらい」を載せたわけです。
正直じいさんと意地悪じいさんが出てくる話では、正直者が徳をするという教訓話の部分を取り除いてみると、本来の民間信仰のようなものが見えるときがあるような気がします。
昔話って本当に奥が深いですよね。
Naokoさんのブログもがんばって続けてください。
越後 久治 | 2009/05/31 09:04
お爺さんの瘤が、医学的にどんな病状だったのか教えて下さい。

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