百人一首 2 持統天皇

春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天の香具山 持統天皇


この歌は、初夏の歌ではなく、早春の歌だという説があり、誰の説か忘れていたのだが、
数年前に中西進の講話CD集『万葉秀歌を旅する』を聞いて、中西氏の説とわかり、捨てておいてはまづいと思った。講談社文庫の中西氏の万葉集は、よくひもといていた時期もある。
最初にこの説を聞いたのはテレビ番組のような記憶もある。

さてその解釈とは、
早春のまだ寒い日の早朝をイメージすると良い。
いくつかの春の行事も終えたが、まだ寒い季節。天皇が朝お目覚めになり、窓を開けると、あたりは一面の雪景色。遠く天の香具山も雪に覆われ、美しい輝きに満ちていた。ところが女官たちは、寒い寒いと言ってまだ誰も起きて来ない。そこで天皇は歌をお詠みになった。
いつまでも寝ているから、春も過ぎて、夏が来てしまっていますよ。御覧なさい、もう夏の白い衣を干しているではありませんか、天の香具山では。
こんなイメージである。

中西氏によると、催馬楽に類似の歌詞があるらしく、こう解釈するしかないような話。
そもそも、神聖な天の香具山に洗濯物を干すはずがなく、洗濯物が王朝人の歌の題材になるはずがない。
初春に山の湧き水の前で行われる田植祭は、初夏の田植行事を予祝するものである。季節といい、どこか持統天皇の御歌とも重なっている。「1」の天智天皇の歌は、稲作の後半の秋から冬にかけての歌だった。2つはセットのようでもあり、2つで1年が繰り返して行く。
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