近世古文書の世界

神話の森のホームページ内に、新しく、江戸時代の村の古文書についてのコンテンツを開設する予定です。(4月の予定)
最近は江戸時代への関心が高まっているらしく、一般に知られた著名な研究家といえば故杉浦日向子氏など、江戸時代の庶民の生き生きとした生活ぶりが、現代の世知辛い世の中と対比されて紹介され、見直されています。
ところがそういったことは、江戸など一部の都会の町民たちの間の話であって、国民の圧倒的多数を占めた地方の農民たちの生活については、伝統的な信仰生活についてはよく語られますが、それらを除けば、経済的な貧しさであるとか、支配者の言いなりだったとか、そんなことばかりが強調されてきたようなところがあります。
我々の先祖について、無能で支配者の言いなりだったという見方には、「有能な現代社会の自分」という考えが前提になっています。現代人はそれほど有能でしょうか。
ま、そういった反省も大事かと思います。

アーカイブやカテゴリのページの表示が遅いときがありました。
もしやと思い、一年分のアクセス解析のログをサーバーから削除して様子をみます。一年分の量が73メガバイトもありました。もっと少なく済むものに変えたいところです。
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江戸時代の貨幣単位

江戸時代の貨幣単位について私がおぼえていたことは、4進法のようなもので、
1両が4分、1分が4朱、1朱が400文、ということだった。

しかし江戸時代初期の幕府の取り決めでは1両が4000文ということだったらしい。その後だんだん変動相場制のようになって、江戸中期から幕末直前にかけては6400文前後(1朱=400文)で動いていたらしいのである。

では、1両は今の金額でいえばどのくらいだろうか。
それについては、これまでは、米の値段で換算した金額を示す学者さんが多かった。戦前まではそれでも良かったのかもしれないが、戦後の食生活の変化で、米の値段はあまりに安価になりすぎている。現在の米の値段で換算すると、江戸のころは米1石(10斗、約150kg)が金1両なので、1両は7万円程度という安い金額になるらしい。
杉浦日向子さんの話では、大工さんの月収がちょうど1両くらいで、10両盗めば首が飛ぶというときの10両とは、普通の人の年収に近い金額だったらしい。
当時の大工は花形職業でもあり、それを考えれば、1両=50万円くらいになっても良いかもしれないが、30万円くらいというのが最近の学芸員さんの話。

そば一杯で16文、というのも比較的安定していたらしい。そば一杯が今の800円とすると、1朱は2万円、1分は8万円、1両は32万円である。このくらいがいちばん実態に合っているのではないかと思う。1文=50円である。

金森敦子著『伊勢詣と江戸の旅』(文春新書)では、旅の費用や土産代を、例によって米の金額から今の円に換算して補足説明してあったが、安すぎてぴんとこないので、いくつかを1文=50円で換算してみた。

新発田藩の大工の日当  350文 17500円
東海道の旅篭一泊二食付 200文 10000円
善光寺大部屋一泊二食付 105文  5100円
鎌倉見物案内料     100文  5000円
同 案内の絵図1枚    12文  600円
同大仏胎内拝観料     6文  300円
大神宮おふだ       6文  300円
土産の足袋一足     130文  6500円
旅行案内記(本)     50文  2500円


鎌倉見物案内料とは観光ガイドの人に支払う料金で、団体で案内してもらっても同額。
大神宮おふだとは、伊勢神宮の鋒先型のおふだで現在も300円くらいだと思う。現在の各家庭にまつられる神宮大麻と呼ばれる長四角の少し厚みのあるおふだは明治以降のものである。
足袋など衣料品や書籍は高価だったが、それらが安価になったのは最近30〜40年くらいのことだろう。
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