月読命(ツクヨミノミコト)

古事記や日本書紀に出てくる月の神を、月読命(つくよみのみこと)という。天照大神、須佐之男命と三柱で「三貴子」と呼ばれるが、月読命に関する物語は他の二神とくらべてずっと少ない。

古事記では「夜の食国(をすくに)」を支配する神という。
また、日本書紀の一書で、海原を支配するというのは、潮の満ち引きを支配するという意味なのだろう。海の水を支配し、万葉集に「月よみの持てる変若水(をちみづ)」と歌われたように、若返りの水をももたらす神である。

読(よみ)とは、「数える」という意味の言葉で、日を数えることを日読(かよみ)といい、暦(こよみ)と転じたという。月の満ち欠けを順に数えて月日の移りを認識したのだろう。農耕の時期を知らせる神でもある。
新月から次の新月までの期間は約29.5日という半端な日数なので、暦法の未発達のころは月が出てみないと新しい月になったかどうかはわからなかったと思う。古い時代には、一日の始りは、月の出、ないしは日没だったという。神が現れて祭りが行なわれるのも古くはこの宵の口からで、夜明けの鶏の鳴き声とともに神は帰った。
明るい夜の照明に慣れた近代人が抱くような闇夜への恐怖感はぐっと少なかったのだろうと思う。
日本書紀で「月弓尊」と書くのは、三日月や半月の形から「弓」と書いたのだろうが、ギリシャ神話でも月の神アルテミスは狩りの神であり、こういうのは世界共通の観念なのだろう。
記紀では月読命は女神だとも男神だとも記さない。

月読命をまつる神社は、伊勢の別宮の月夜見宮や、出羽三山の月山神社など、多数ある。東北関東では月山と関係の深い神社も多い。
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Comments

京都検定ブログ人 | 2005/11/01 12:04
 はじめまして、京都検定ブログ人といいます。月読尊の話、勉強になりました。京都には西京区に月読神社があります。月読尊自体がマイナーなので、あまり有名ではありませんが・・・。
また、勉強しにお伺いします。では失礼します。
森の番人 | 2005/11/01 19:28
コメントありがとうございます。
現在は松尾大社の摂社になっている月読神社のことですね。延喜式の名神大社の葛野坐月讀神社のことであるとなると、月読尊をまつった神社としては代表的な一つになるのでしょう。http://www.genbu.net/data/yamasiro/tukiyomi_title.htm" target="_blank">http://www.genbu.net/data/yamasiro/tukiyomi_title.htm
石鈴 | 2007/03/27 21:16
十年ほど前になりますが、伊勢の別宮の月夜見宮の社前に十人ほどの人びとが、額ずいているのを目撃しました。何かの講かとも思いましたが、妖しくも不思議な光景でした。連れが先を急ぐので確かめることができませんでしたが、今でも時々思い出すことがあります。
山田さん | 2007/05/31 09:13
山田と申します。月読尊の事、あんまり
知らなかったんですが、すんごい勉強に
なりました。
ありがとうございました。
森の番人 | 2007/06/03 22:34
山田さま、閲覧ありがとうございます。
このテーマはもう少し継続したいテーマではあります。
通りすがり | 2007/08/21 23:55
検索しててここにたどり着いたのですが
月読命については今色々な話が出てます。

記紀に記述が少ないので、蔑ろにされがちですが
その数少ない記述の一つ、 顕宗紀の物です。
京都市の月読神社に関わって来る記述なのですが
顕宗天皇三年、壱岐で月の神が宣託をしたので
山城国葛野郡歌荒樔田に社を創建した旨の記述
があります、これが京都市の月読神社で
年数が正しければ、松尾大社などの京都市内の
古社と呼ばれる部類の神社の中で最古の神社
となります。壱岐にも月読神社があったりして
結構面白そうではあります。
何せ記述自体が少ないですから。

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