十五夜の話

旧暦8月15日の夜が十五夜、今年は9月18日に当る。
八幡宮や八幡神社の例祭がこの日であることが多かったが、現在は月おくれの9月15日の祭とするところが多い。

  石清水すみける月の光にも昔の神を見る心地する  後鳥羽院

十五夜では、縁側に月見だんごや柿の実やすすきなどを供え、江戸時代のころから江戸の庶民の風流な行事とされた。江戸のやり方が全国に広まりつつあるようではあるが、地方の習慣では、供えるのは、だんごではなく里芋であることが多い。すすきでなく稲穂である例もある。和歌山県西牟婁郡では、高い竿の先に稲穂と芋を結びつけて庭先に立てるという。月に届くかのような高い竿ではあるが、竿自体は神の依代だと考えられているらしい。元は稲の収穫祭ではないかとも言われる。沖縄では、十五夜の前後の旧暦8月には、祖霊の祭と稲の収穫祭が行なわれるそうだ。

芋に着目してゆくと、稲作以前の、芋栽培の収穫祭ではないかという見方もある。十五夜の里芋(またはだんご)は、子どもたちが盗んでも良いとされてきた。もとは大人が盗んでも良かったらしいが、その場合、量に制限があり、盗んだしるしに藁づとなどをその家に置いて来なければならないなどのルールがあった。盗まれた家からすれば、神に供えた芋を神が持ち去ったものと考えて、喜ばしいこととされたという。

あるいは、正月の雑煮が餅でなく里芋が主だった地方があり、十五夜にも里芋を食べた。雑煮の餅が四角でなく、丸い餅の地方では、もとはそういう「里芋の文化圏」だったような傾向もあるらしい。
芋のなかでも特に里芋が好まれるのは、里芋の葉にたまった露が七夕で月の神に供えられたこととも関係しているのだろう。(七夕の記事を参照)

  月ごとに見る月なれど このつきの今宵の月ににる月ぞなき 村上天皇

(「つき」は杯の意味の古語の「つき」を掛けていて、杯に映った月を見ている風情である)
comments (2) | - | Edit

Comments

Comment Form

icons:

  page top