「五説経」とは

中世の説経節の物語で有名なものを「五説経」といふことを思い出して、頭の中で1つ2つと数へてみたら、5つでは足りないような気がした。そこで国語辞典4つと百科事典2つを調べてみた。
山椒太夫と苅萱の他は、入れ替ることがあるとのことで、8つくらいはあるらしい。
表にまとめてみた。◎印が各辞典の説明の最初に出てくる5つ、○印は入替の例。

    広辞苑 国語大 大辞林 大辞泉 平凡百 ブリ百
山椒太夫 ◎   ◎   ◎   ◎   ◎   ◎
苅萱   ◎   ◎   ◎   ◎   ◎   ◎
信田妻  ◎   ◎   ○   ○   ◎   ○
梅若   ◎   ◎   ○   ○   ◎   ○
梵天国  ◎   ○   ◎   ◎       ◎
愛護の若 ○   ◎   ○   ○   ◎   ○
俊徳丸      ○   ◎   ◎   ○   ◎
小栗判官     ○   ◎   ◎   ○   ◎


広辞苑には、「説経浄瑠璃の代表的な五つの曲目。
山椒太夫」「かるかや」「信太妻」「梅若」「梵天国」(または「愛護の若」)。」とある。

大辞林では「古くは「苅萱」「俊徳丸」「小栗判官」「三荘太夫」「梵天国」(表の◎印)をさしたが、のちには、「苅萱」「三荘太夫」「信田妻」「梅若」「愛護若」(広辞苑説に近い)をいう」のだそうで、ブリタニカもこれに習ったような書きぶりだった。大辞林、大辞泉、ブリタニカの3つが一致するのは、典拠が同じためかもしれない。
平凡社の世界大百科では、「五説経」の語は、江戸の寛文のころに見えるが「何をさしたか不明」といふ。江戸時代以後の言葉であるなら、「古くは云々、のちに云々」といっても、たいした時代差ではないようなので、選別にこだはる必要もないと思ふ。

歌語り風土記には、俊徳丸、梵天国を除いた6つを載せた。(本記事内にある、題名からのリンクを参照)

子ども向けの再話の本や、現代語訳の本では、「21世紀版・少年少女古典文学館」の第16巻、ねじめ正一の「山椒太夫」「俊徳丸」が、良いと思ふ。七五調を折り交ぜた文章で、少年向けだからと原作の残酷な表現を全削除といふこともなかった。残酷表現とは、曼陀羅や地獄図に似た宗教性とともに理解されるべきなのだらう。
「梵天国」は、『御伽草子集』に入ることがある。
「梅若」は謡曲「隅田川」の構成のままでは面白みが少ないと思ふ。
「愛護の若」は、現代語の本が少ないかもしれない。
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