ユリシーズ

ギリシャ神話というか、ホメロスの叙事詩を再構成したイタリア映画『ユリシーズ』をNHK-BSの正月テレビで見たが、なかなか良い映画で、音楽が良ければもっと良いだろうと思う。
ジョイス(丸谷才一訳)の小説『ユリシーズ』は、40年も前に購入して未読のまま収納中。

ユリシーズ(ギリシャ名でオデュッセウス)は、トロイ戦争で手柄をあげて帰還するとき、さまざまな島へ立寄って、島の王女やら魔女やら女神たちに遭遇したり、一つ目の巨人の神との戦いなどのシーンもあり、飽くなき冒険は20年も続いた。映画でも、ナウシカ、キルケ、セイレーンなどの名前は多く出てくるが、話を2時間以下の映画にまとめなければならないのは大変だ。
出逢った女たちについては魔女キルケの話が映画のクライマックスになっていて、その島を抜け出そうとするとき、島に残って不死の身で神となり恐れるものもなく暮らすか、外へ出て人間のまま死を怖れて暮すか、の選択を試される。「怖れてこそ勇気の価値がある」と映画のユリシーズは言う。勇気とは、ユリシーズが武人だからそういう言葉を使うのかもしれないが、怖れとは、畏怖のことだが、限りあるもの、儚いものへのうつくしみでもあるのだろう。

ジョイスの訳者・丸谷才一によると、20世紀文学の特徴の一つに神話的方法があるとのことで、神話的方法はナショナリズムを越えるためのものであるという。けれど日本国内だけの狭い意識で記紀神話をとりあげても、そうはならないので、よくよく注意しなければならない。
ユリシーズ
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