本の持ち方

書店に並んでゐる雑誌の表紙を見ると、表紙の中央よりやや小口寄りに、爪跡のようなものがあり、裏表紙も同様の状態のときがある。立ち読みした者がつけたのだらう。
どうも、本の持ち方が間違ってゐるのではないかと思った。

そこでネットの画像検索で「読書 イラスト」を検索してみると、本を立て、本の両端を掴んでゐる子供の絵が実に多い。

立ち読みの者は、そのような持ち方(掴み方)で、大判の雑誌を開いて左右を掴み、親指は押さへたまま、四本指を中に寄せて中ほどまでを閉ぢ、片手の親指をゆるめて1枚だけ離し、反対の親指でその1枚を掴み、両手を左右に広げて新しいページを読む、というやりかたをしてゐるようだ。(文章の説明だけではわかりにくいだろうが)
ページめくりのとき、本の左右を掴んだまま中に寄せるのだが、そのとき紙は直角に近い状態に曲る。脇で見てゐると、それらの一連の動作を高速に行なって飛ばし読みをしてゐる乱暴な者もある。そのために本を傷めるのだらう。
単行本では、カバーを上にずらしたまま棚に戻してあるのがあるが、本を立てて掴み持ちしてゐるので中身が下がるからだらう。
女性の場合は、そんな乱暴なことはせず、扱ひも丁寧な人が多い。

では、正しい本の持ち方、本の持ち方の手本とは、どのようなものであるべきか。じつは恰好の手本がある。

誰でも知ってゐる二宮金次郎の像である。手本は二宮金次郎 といふわけだ。

二宮金次郎の像は、背中に薪を背負ひ、左手の手のひらを胸の下で上に向けて水平にし、その高さで、手のひらの上に開いた本を載せてゐる。本は、やや手前が低くなるが、ほぼ水平である。和本は軽いので、片手に載せるだけでじゅうぶんである。
ページをめくるときは右手の親指で、左ページの下から右へめくる。
小さい本などで、すぐに閉ぢてしまいやすい場合は、左手の親指の先で、本の表側から軽く押さへる。

最近の本は、紙が硬く、製本も接着剤で固めるだけなので、ページを開きにくいといふ問題もあるのだらう。
欧米人では、小型の本や手帳を持つときは、片手で、手のひらを顔に向けて胸の高さに立て、本の下から、親指と小指を本の表に出し、残りの指は裏側で本の背のあたりを支へるといふ人が多いようだ。この場合は、軽く挟むだけなので、本は立てたほうが安定する。
【倚松帖より】
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